それでは衿ぐりを仕上げていきます。衿ぐり部分は、まず別糸で目を拾って、適当な高さまで1目ゴム編みをして、最後に閉じるという作業になります。
衿ぐりの目を拾う
下の図は、衿ぐり部分の図になります。

このセーターの衿ぐり部分は、図面にあるように首の後ろ部分は20目、前の部分は34目拾い目をする事になります。
「なぜ20目と34目なのか?」と、疑問に思われるかと思います。これにつきましては後半の図面を作る中でご説明させていただきますので、とりあえずここでは衿ぐりの目の拾い方と最後の1目ゴム編みの閉じ方だけご理解いただければと思います。
全体的に概ね等間隔で目を拾う必要がありますので、途中部分等が分かるようにマーカーを付けておくと間隔が確認しやすくなります。
このセーターでは、首の後ろ部分はその中央にマーカーを付けて(D点)、それぞれ10目ずつ拾っています。ここからはメリヤス編みで使った針より2号程度細い針に変えます。私のセーターでは13号針を使っています。
前の部分はまず中央にマーカーを付け(B点)、更にABの中間より少し中央りの部分(E点)とBCの中間より少し中央りの部分(F点)にマーカーを付けます。そして新しい針でA―Eで9目、E―Bで8目を拾い、更に新しい針でB―Fで8目、F―Cで9目を拾います。
この衿ぐりもそれぞれの目の間隔を確認しながら、ずれていると思ったら戻って作業を進めてください。ここも最初まで戻ったとしても大した事はありませんので、気楽に拾い目をしてください。
衿ぐり部分は、向かって右側の首元(A点)から目を拾い始めます。
目を拾う時は、写真にあるようにカーブしている部分では端の目の隣の目(1目内側)から、首の後ろ側や首の前の伏せ目をした部分では、伏せ目のすぐ下のV字のところから拾い目をしてください。


全ての目を拾い終わったら、好みの高さまで1目ゴム編みで編んでください。私のセーターでは、5段分1目ゴム編みをして、6段目で閉じました。
1目ゴム編みを閉じる
1目ゴム編みを閉じるには、2つほどやり方があります。一般的なのは閉じ針を使って閉じる方法です。もう1つはくつ下の履き口部分でご紹介しました、Jeny Staimanさん考案による方法(Jeny’s Surprisingly Stretchy Bind-Off)です。
それぞれ閉じ方が異なりますが、閉じた後の形も若干異なります。黄色の毛糸は閉じ針を使って閉じたもので、赤い毛糸はJeny Staimanさん考案による方法で閉じたものです。


上の写真は、それぞれの閉じを横から見たところで、下の写真は上から見たところです。
閉じ針で閉じたものは、閉じた部分がΛ字形になります。Jeny Staimanさん考案による方法で閉じると、閉じた部分が若干四角っぽく仕上がります。
私はJeny Staimanさん考案による方法の方が簡単で気に入っているので、そちらの方法で閉じています。見た目も先生から「これもアクセントになっていいわね」と言ってもらえたので、特段問題はないと思っています。この後ではJeny Staimanさん考案による方法で閉じた動画をベースにしてご説明させていただきます。
自信がないので「ご説明」はできませんが、一応閉じ針を使う閉じ方も最後に(付録)という形で載せておきます。
Jeny Staimanさん考案による1目ゴム編みの閉じ(Jeny’s Surprisingly Stretchy Bind-Off)
こちらの閉じ方は、正式には「Surprisingly Stretchy Bind-Off(驚くほど伸縮性の高い閉じ)」となっています。色々調べたのですがJenyさんご本人は動画は挙げていないようですが、Cat Bordhiさんという方が動画を挙げています。
Cat Bordhiさんにご連絡してリンクを貼らせていただけるようお願いしたところ、快くご了解をいただけました。私の動画より動きが遥かにスムースですので、リンクよりそちらの動画もご覧ください。なお全て英語ではありますが、閉じ方はよく分かると思います。
Cat Bordhiさんの動画では2目ゴム編みを閉じているので同じ閉じ方を表目とウラ目でそれぞれ2回ずつやっていますが、1目ゴム編みの時はそれぞれ1回ずつやるだけの違いです。
閉じ始める前の注意点ですが、「あまり糸を引っ張り過ぎない」事です。これは閉じ針を使った時でも同じです。閉じる時に糸は引っ張った方がきれいに締まった感じにはなりますが、締め過ぎると伸縮性がなくなって首が入らなくなってしまいます。この点はご留意ください。
1目め(表目)
① まず糸を向こう側から手前側に向かって掛けます。
② そして最初の目(表目)を表編みします。
③ 最初に掛けた目をかぶせます。
これが最初の目の閉じ方です。
この後は、ウラ目も表目もそれぞれ同じ作業が続きます。
2目め(ウラ目)
① 糸を手前側から向こう側に向かって掛けます。
② そして次の目(ウラ目)をウラ編みします。
③ 掛けた目をかぶせて、更に右針に残っている目もかぶせます。
3目め(表目)
① 糸を向こう側から手前側に向かって掛けます。
② そして次の目(表目)を表編みします。
③ 掛けた目をかぶせて、更に右針に残っている目もかぶせます。
これ以降のウラ目は2目めと同じ作業が、表目は3目めと同じ作業が続きます。糸を掛ける方向はそれぞれ異なりますが、「掛けて、編んで、かぶせて、かぶせる」という作業を繰り返す事になります。
閉じの最後
① 衿ぐりを一周閉じて最後のウラ目に「掛けて、編んで、かぶせて、かぶせる」作業をしたら、
② 最後の目に糸を通して糸しまつできる程度に切ります。
③ そしてその糸に閉じ針を付けて、最後の目に糸を通してから最初の目に針を通して、
④ 最後に閉じた目にループになるように通します。
これでグルリと一周閉じられた事になります。
閉じ針を使った閉じ方は途中で左右が分からなくなって混乱したりしますが(私は毎回混乱します)、Jeny Staimanさんの方法は単に「掛けて、編んで、かぶせて、かぶせる」の繰り返しなので、混乱する事なく最後まで閉じる事ができます。
くつ下の履き口の閉じとの違い
Jeny Staimanさんの方法は「Surprisingly Stretchy Bind-Off(驚くほど伸縮性の高い閉じ)」というぐらいで、非常に伸縮性を高くする事ができる閉じ方です。これはつま先から編み始めたくつ下の履き口を閉じるのに最適な方法です。
何足も編んでみて実感したのですが、くつ下の履き口は相当広がらないと、履いたり脱いだりがしにくくなります。ですので「ユルユル」ぐらいでちょうど良い感じになるので、「糸を引っ張らずに送ってやる感じ」とくつ下の時にはご説明させていただきました。
しかしながらセーターの衿ぐりでくつ下と同じように閉じてしまうと、首の周りがダラーンとなってしまいます。そのためくつ下の時よりは軽く引っ張るぐらいの感じで閉じるのがいいかなと思っております。
ただこればっかりは出来上がってみないと見た目と伸縮性が確認できません。出来上がってから自分で着てみて、見た目と伸縮性を確認してください。
もし伸縮性に納得がいかない場合には、潔く衿ぐり部分をほどいて最初からやり直す事をお勧めします。この部分を全てほどいても身頃には何も問題はありませんし、衿ぐりで編んだ部分も数段程度です。首元は目立つところですし、ここは妥協せず、自分で満足がいくようにやり直す事をお勧めします。私も「失敗したな」と思った時は、潔く最初からやり直しました。
(付録)閉じ針を使った1目ゴム編みの止め方
閉じ針を使った1目ゴム編みの閉じは何度も練習したのですが、上手くできないでいます。そうした事もあって、私はJeny Staimanさんの方法で閉じています。ただ閉じ針を使った方法も一応ご紹介はしておこうと思います。
以下は先生に教えていただいたりYouTubeで見たりした事を自分なりにまとめたものではありますが、正直自信はありません。間違っているところがあった場合は、ご容赦いただければと思います。以下はあくまで「ご紹介」という位置づけです。自信がないので「ご説明」はできません。
1目め(表目)と2目め(ウラ目)に糸を通す

① 1目めの表目に、右側から針を入れて糸を通します。
② 1目めと隣の目のウラ目との間に、向こう側から針を入れて糸を通し、2目めのウラ目の左側から針を入れて糸を通します。
これ以降は、表目・ウラ目とも同じ作業の繰り返しとなります。
1目め(表目)に糸を通して針から外して、3目め(表目)に糸を通す

③ 1目めの表目に、左側から針を入れて糸を通して、棒針から外します。
④ そして3目めの表目に、右側から針を入れて糸を通します。
2目め(ウラ目)に糸を通して針から外して、4目め(ウラ目)に糸を通す

⑤ 2目めのウラ目に、右側から針を入れて糸を通して、棒針から外します。
⑥ そして3目めの表目と4目めの裏目の間に、向こう側から針を入れて糸を通し、4目めのウラ目の左側から針を入れて糸を通します。
これ以降は、表目については③と④の作業を、ウラ目については⑤と⑥の作業を繰り返してください。
閉じ針で閉じる場合は、1つの目に必ず右と左から糸が通る事になります。ですので仕上がりは、「V」字が並んだようになります。
閉じの最後
① 衿ぐりを一周閉じて最後のウラ目に左側から針を入れたら、
② 最初の目(表目)に左側から針を入れます。
③ そして最後のウラ目の右側から針を入れます。
これでグルリと一周閉じる事ができます。
Jeny Staimanさんの方法は「1つの目を閉じたら次の目を閉じる」という形で順次作業が進むのですが、閉じ針を使う場合には毎度1目飛ばし(例:表目に糸を通して外したら、次のウラ目を飛ばしてその次の表目に糸を通す)になる上に、表目とウラ目で左右の順序が逆になるため、私はいつも途中で分からなくなってしまいます。
その結果、本来なら全ての目に2回ずつ糸を通さなければならないのに所々1回しか糸を通さなかったり、左右を間違えて同じ側から2回糸を通してしまったり、という失敗を私は繰り返しております。
ただこうした失敗は別の色の糸で閉じると目立ちますが、動画の最後で見ていただいた通り、同じ色の糸で閉じればさほど目立つ事はないかなとは思っております。
閉じ針を使ったゴム編みの閉じは、色々な方がYouTubeに挙げておられるので、そうした動画等を参考にしていただければと思います。